中央競馬の可能性
二割の人は「よしやってみよう」と前向きに行動に入り、六割は「模様眺めで、行けそうなら協力しよう」という態度で、残りの二割は「絶対拒否」の抵抗の姿勢をとる。
JITシステム導入のつまずきによって、二割の反対派がいっせいに「それ見たことか」と改革派の攻撃を強めX社の工場では、品質を保証された製品が計画通りに生産されるという、この業界においては画期的なことができたわけである。
しかし工場改革に成功しても、本社機能から見れば「当たり前のことができただけ」と経営者はほとんど評価しない。
画期的な新製品を開発したり、販売を飛躍的に伸ばしたりすることは「当たり前のこと」ではないので開発部門や営業部門は使命を達成すれば目に見えて評価される。
一般的に経営者は本社機能については「変化」をつかみやすいが、工場の変化にはほとんど気がつかない。
X社の事例でも、経営陣も本社機能も工場に「大変革」が起きていたのにまったく無関心で、さらに本社機能を巻き込む全社でのJITシステム構築の段階で大混乱が生じ、X社の変化への活動はそこで停止してしまった。
日本の普通の企業でT式の企業革新手法を展開するときに、X社に見られたように現場部門(辺境)から変化は始まるが、その変化が本社機能(中心)に及んだところで変化への活動は停止するケースが多い。
改革を全社レベルで成功きせるためには、本社機能にも「ゆらぎ」を起こし、変化への行動を起こさせる「仕組み」が必要になる。
そのためにはその仕組みを働かせる「経営マインドを持った人材」を本社機能のなかにも育てることが大切なのである。
「日本的改革」「自主的な常識はずれの改善活動」を全従業員がなんの違和感もなく定常的に展開するT式日本的経営は世界に通用する「最強の経営」と言うことができよう。
日本的な仲間集団の強みを活かしたT式企業革新手法は、アングロサクソン型の経営革新手法の導入に右往左往している多くの経営不振の日本企業に重要なヒントを示唆している。
「T式最強の経営」を一言で表現するならば、それは「全員参加のイノベーション活動」と言えるしかし、現実に日本企業がこのユニークなT式日本的経営に着目しても、その展開で成功するためにはいくつかのハードルがある。
その最大の問題が、変革を進める「人材」がいるか、変化に抵抗を持たない「企業風土」をつくれるか、である。
組織の変革と進化を推進するうえで、その中心になることができる「人」の存在は決定的な要因である。
GEのW会長も、改革のごく初期の段階では外科手術的な手法を多用していた。
しかし、改革を定着させ、さらに進化させていくという課題に直面したときに、改革を実際に推し進めていくことのできる「人」の必要性を強烈に認識するようになっている。
この認識を得た後、W会長はその時間のかなりの部分を「人」の育成、もしくは社員とのコミュニケーションに意図的に費やすようになっている。
今まで見てきたように、Tが進化し続ける組織である理由も、それを推進し続けている「人」とその「人」を常に新たに生み出していく育成の仕組みの存在によるところが大きい。
変革を推し進めていくことができる中核的人材をどのようにして確保するのか。
変革型の人間がすでに組織の中核を占めているTのような会社と、現状維持型の人間が管理職の大半を占めている組織とではアプローチの仕方は違うだろう。
いずれにせよ、社員の多くが変革的日本的経営の強みに学んだものが多いはずである。
一九八○年代に入って、日本企業、とりわけ自動車関連の日本企業がアメリカで積極的な現地生産をはじめとした事業展開を進めていった。
日米貿易摩擦に端を発したこの日本企業のアメリカ進出劇は、従来のF生産方式に対するリーン生産方式の優位性をいやがうえにも際立たせる作用を果たした。
アメリカで、リーン生産方式に代表される日本的経営に対する関心が非常に強まったのもこの頃である。
従来のFモデルに対するリーン生産方式は、単にかんばん方式やアンドンのような手法としての特徴もさることながら、Fモデルの身分制にも似た厳然たる職階制(職位による食堂等)の姿勢を常に持ち続けるようになるにはどうすればいいのかというのは、企業組織の変革にとって最も重要な課題なのである。
T方式にもヒントを得て「進化し続ける組織」をつくり上げたGEのW革命に見るように、八○年代からのアメリカの経営革新の多くが戦略論的なハード変革を先行させて失敗したのに対し、八○年代後半から九○年代にかけて人間性を重視する組織・風土論的なソフト変革に積極的に取り組んだ企業は成功している。
その歩みを振り返りながら日本に立ち返り、変革型人材の育成方法を考えていこう。
トップも含め、同じ作業服を着て、同じ食堂で食事をするといった日本的マネジメントの持つ意味が、人のやる気との関連でさまざまな角度から分析され、研究されていった。
従来から、そのベースは日本に比べはるかに整理され、開発されてきたアメリカのマネジメント理論が、日本的経営の良さと思われていた点(人を大切にする、チームカがあるなど)を採り入れる形で、個人主義からチームワークで仕事をしながら個を活かす、というように急速に新たな展開を見せ、開花し始めたのもこの頃であった。
九○年代に入ると、人を企業経営のなかでどう活かすのかに焦点を当てた著作が、アメリカでも次々とベストセラーに名を連ねるようになった。
八○年代の後半から始まって、九○年代に入って成果を見せ始めたアメリカ企業の改革は、戦略論的な部分のみが語られることが多かったが、実際のところ「人」にかかわるところでも、非常に大きなエネルギーを費やしていたという事実がある。
例えばGEを例にとると、W会長はその時間のかなりの部分を人の育成に費やしているという事実が、ここにきて非常に注目を集め始めている。
八○年代の後半からスタートしたアメリカの産業界の大改革は、さまざまな失敗の経験を積み重ねながらも、九○年代に入るとその具体的成果を見せ始めた。
かつて日本企業にその生産性の点で後れをとっていた主要なアメリカの企業、例えば自動車、電機産業のなかにも、明らかに以前とはまったく違う姿を見せ始めた企業が目立つようになってきていた。
し、この外科的手術が進行するなか、その生産性を本当に高め、維持していくには、企業文化の改革なしには不可能であるという認識が生まれ、実行されていった。
つまり、戦略・組織構造・システムといったハード変革だけではなく、人間の行動規範、企業文化といったソフト変革なしには、組織のなかに変革が根づき、進化しないことを悟ったのである。
GEが具体的にどのようなことをソフト変革として行ったのかを見てみると、まず第一は、「その事業をいちばんよく知っている現場の従業員こそが事業戦略の推進者であり、変革の主役である」と、現場やラインマネジャーの役割を明確に定義したことである。
同時に、「スタッフや経営陣の使命は現場を支援すること」を明確にした。
第二に、ラインマネジャーに一様の権限と資源を委ねた。
第三に、K設立。
ここで多くの従業員がお互いにコミュニケーションをとり、信頼感を養い、教育を受けられるようにした。
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